【バラのシュートが出ない…どうする?②】シュートが出るしくみと効果的な対策を解説


シュートを出す方法、もっと知りたい!

そのためにはシュートが出るしくみを知ることが重要だね。
しくみが分かれば対策への理解が深まるよ。
前回の記事では、シュートの出ない原因と出す方法について「初心者さんでもすぐにできる」カンタンな対策をご紹介しました。

今回はベランダでバラを15年間育ててきた中で学んだ「シュートが出るしくみ」とそれを基にした「シュートを出す方法」について、育てているバラの画像を交えながら詳しくお話していきます。
- シュートが出るメカニズムについて知りたい人
- シュートを出すための効果的な方法を知りたい人
シュートが出る仕組みを知ろう
シュート発生の鍵を握る「根」と「葉」のバランス
バラのシュートが出る時というのは、「根」と「葉」のバランスが大きく関わっています。
もう少し説明すると、「養分や水分を吸収する根」と「光合成する葉」のバランスのことです。
根が健康で栄養や水分をしっかり吸い上げているのに対し地上部の枝葉が相対的に少ない場合、根の吸収能力が相対的に過剰になります。
この「余剰エネルギー」を新しい成長に転換しようとするのがシュート発生のメカニズムです。
根に余力のある状態がシュート発生につながる
バラは根の容量と地上部の枝葉の量のバランスを調整しようとします。
根が健康で容量が大きいと、地上部の成長を支えるエネルギーに余力が生まれシュートが出やすくなります。
それに対して、根詰まりを起こしていて根の余力がない場合や、不要な枝が多く根が供給する水分やエネルギーが十分ではない場合はシュートが出にくくなります。
どんな時に根に余力が生まれ、シュートが出やすくなるのか?
鉢増し、植え替えをした場合
私がバラのシュートを出す方法として一番効果があったと感じるのは、冬の時期の「鉢増し」と鉢の大きさは変えず根を減らす「植え替え」です。
2025年1月に鉢増しや植え替えをした10株のバラのうち、2024年お迎えした新苗にシュートが出ないものがありましたが、8株にシュートを確認しました。(2025年5月末現在)
育てている場所がベランダのため鉢増しできる鉢の大きさに制限がありますが、私は10号鉢になるまで「鉢増し」をし、そこからは根を減らす「植え替え」をしています。
それによって新たに根が張ることのできるスペースを増やすことができ、シュートを出すことにつながります。(10号鉢に達した場合、そのあとの植え替えをどうするのか?についてはまた別の記事でお話したいと思っています。)
剪定で枝葉を少なくした場合
先ほどの「根の育つスペースを増やす」考え方とは別に、「地上部の枝葉を減らす」ことによって、「根に余力のある状態」を作り出すことができます。
例えば冬の休眠期においての強めの剪定がそれにあたります。
枝葉を少なくすることで根の吸収能力の方が上回り、シュートを出すことで地上部と根のバランスを取ろうとします。
シュートが出るには「健康」であることが何より重要
根に余力を持たせることでシュートが出やすくなるのは事実ですが、それ以前にシュートを出せる株には条件があって、それは「健康である」ということです。
病気などで弱っているバラは、持っている体力を病気と闘うことや既存の枝を維持することに消費するために、新しいシュートを出す余力がありません。
健康な株であることがシュートを出すための第一の条件で、その上で適切な植え替えや剪定があって初めて元気なシュートを出すことができます。
前の記事で初心者さん向けにお伝えしたシュートを出す方法は、「バラを健康に育てる」ことに焦点を当てたものです。

株が健康でさえあれば、あとは適切な植え替えや剪定をすることでシュートが出る可能性が高まります。
〈体験談〉虫の被害が生存本能を刺激しシュート発生
ここまで一般的なシュート発生のメカニズムと、「根」と「葉」のバランスから見たシュートが出る要因について解説してきました。
それとは別に、先ほど解説したメカニズムとは一見外れたような意外なことがきっかけとなってシュートが発生することがあります。
バラが虫の被害により生存の危機を感じ、その反応としてシュートを出すに至った事例(私自身の体験談)を紹介します。
コガネムシ被害にあったバラ”ヒストリー”→シュート発生へ
私が育てているバラのうち、2024年に一番調子を崩していたのがバラ”ヒストリー”でした。
2022年に新苗でお迎えし、2023年1月に一度植え替えしたまま翌年は植え替えせず。
花も少なく枝ぶりもアンバランスなところが気になっていました。
厳しい夏を超えると一層樹勢が落ち、「もしやコガネムシがいるのでは…?」と思い、2025年1月の植え替えで確認したところ、やはり幼虫がいっぱい。その数10匹以上(怖)
根の周りをすみずみまでチェックして虫を取り去り、新しい土に植え替えたところ2025年春には元気なシュートが2本出てたくさんの花を咲かせました。

(左)2024年10月のヒストリー
この頃土の中ではコガネムシの幼虫が根を食べていたのでしょう、成長も思わしくなく株元が少しぐらつく感じがありました。
(右)2025年5月のヒストリー
植替えで株はすっかり健康を取り戻しました。元気なシュートが2本出て花数もアップ!
植物の生存本能とシュート発生の関係性
植物の「生存本能」とは、厳しい環境やダメージに直面した際に、自らを修復するための最大限の努力をする機能です。
今回の場合、この本能が「シュートを出す」という形で現れたようです。
コガネムシの幼虫によって根が食べられたことはバラにとって生命を脅かす危機的状況。
このような状況において、バラは生存のために株に蓄えられた養分やエネルギーを最も効率的に使える場所へと再配分します。
コガネムシにより食べられたものの一部健全な根が残っていたため、バラの「生き残ろうとする本能」により、株に残ったエネルギーを新しい根の再生とシュートの成長につぎ込んだと考えられます。
また、株元に存在するが通常は眠っている「潜在的な芽」が危機的な状況に陥ったことにより活性化し、シュートとして伸びはじめることがあるようです。
今回の”ヒストリー”のシュート発生とコガネムシによる被害からの回復は、これらの要因によって起きた一連の出来事のようです。
バラの強い生命力と再生能力に驚き、バラ栽培の楽しみを改めて感じた出来事でした。
シュートが出る仕組みから分かる対策
シュートが出る仕組みが分かったところで、ここからシュートを増やす具体的な対策についてお話します。
シュートを出す方法① バラを健康に保つ
バラの健康はシュートを出すために何よりも重要な基盤となるものです。
日々のお手入れや冬の植え替えなどの季節のお手入れを着実に行うことは、遠回りのようで実はシュートを出すための確実な方法であると言えるかもしれません。
- 日当たりの良い場所で育てる
- 水やりを見直す(特に根腐れを避ける)
- 肥料を適切に与える
- 病気や害虫を予防する、早期発見し対処する
- 根詰まりしないよう植え替えする
上記の対策の①から③については、別の記事で詳しく解説していますので気になる方は合わせて読んでみてください。

シュートを出す方法② 植え替えと鉢増しで根を育つスペースを作る
根を育つスペースを作ることで、根に余力が生まれシュートが出やすくなるのは先ほどお話した通りですが、その方法は「植え替えと鉢増し」です。
2年に1度は植え替えをする(できれば毎年)
鉢植えのバラは、毎年または2年に1回は植え替えを行うのが理想的とされています。
私もなるべく毎年植え替えしようと心がけてはいますが、中には植え替えできず翌年に回す鉢もあったりします。
その後の生育を観察していると明らかに植え替えしたものの方が成長に勢いがあり、シュートの発生率も格段に上がることが分かります。
また、毎年植え替えしていればコガネムシの被害にも早めに気づくことができ、株を弱らせる前に対処することができます。
「鉢増し」と「根を減らす植え替え」でシュートを促す
ベランダ栽培の場合、育てるスペースに制限があるのでどこまでも鉢を大きくすることはできませんが、私の場合は10号までは鉢増し、その後は鉢のサイズは10号のまま「根を減らす植え替え」を繰り返すことによって新たに根を張るスペースを作りシュートの発生を促しています。
土はバラに適したものを
バラに適した土は「排水性」「保水性」「通気性」の3つが揃った土です。
根腐れしないように「排水性」がありながら、乾燥しすぎも成長が阻害されるので適度な「保水性」があり、根が酸素を吸収できるよう「通気性」もある土がバラに適しています。
自作する場合は赤玉土、腐葉土、堆肥などを組み合わせて配合しますが、私は市販のバラ専用の土を使っています。
シュートを出す方法③ 剪定で地上部の枝葉を減らす
適切な剪定を行うことによって地上部の枝葉が減ることで、根に余力が生まれシュートが出ることにつながります。
基本は「半分の高さに切る」剪定
剪定は奥深く園芸のプロでも意見がさまざまだったりしますが、私がいつも参考にさせていただいているのがまつおえんげいさんの「ガーデンちゃんねる」です。
さすがプロといった本質を深く見抜いたシンプルな方法を分かりやすく解説してくださり、毎回たくさんの気づきをいただいています。
そこで学んだ剪定をベランダのバラ栽培に活かしていますが、基本は「半分の高さに切る」という至ってシンプルなルールです。
冬剪定は樹高の半分の高さに、花後剪定は春に伸びた枝の半分の高さに切る、という方法です。
株元に日光が当たる剪定でシュートを促す
日光はシュートの芽を目覚めさせる役割があり、シュートが出やすい株元に日光が当たるように剪定をすることでシュート発生を促すことができます。
細い枝や古くなった枝を中心に剪定し、株元に日光が当たるようにします。
剪定以外の要因(植え替え、病気、環境、肥料の与え方)も見直してみる
確かに「シュート」と「剪定」は密接な関係がありますが、良いシュートを出すためには「質の良い土で冬の植え替えをすること」と「春になってから病気を出さずに育てる」ことがより重要だとまつおさんはお話されています。
(参考:「ガーデンちゃんねる」2024年11月22日【バラの冬剪定】気軽にできる剪定解説)
良いシュートを増やすためには、先ほどの「シュートを出す方法① バラを健康に保つ」のところでお話したポイントをしっかり押さえることが大切です。
まずは株を健康に、そこに剪定が加わると良いシュートが出る
シュートを出すにはこれといった特効薬があるのではなく、まずは健康な株に育てることが何より重要でその上で適切な剪定をすることがシュート発生の引き金になる、と言えるのではないでしょうか。

昨年5月に新苗でお迎えした”ディスタントドラムス”にもこの春2本のシュートが出ました。
時間の経過で色がオレンジから薄いピンクに変わっていく姿が趣深くて好きです。
さいごに
この記事ではシュートが出るメカニズムについて詳しく説明し、それをもとにシュートを出すための対策をいくつかお話してきました。
シュートを出すためには様々な方法がありますが、個々の対策は「健康な株」という土台があるからこそ効果を発揮することを念頭に置いて、日々のお手入れや植え替えなどの季節のお手入れを丁寧に重ねていくことが重要だと感じています。
手をかけて育てた分、シュートが出たときの喜びはひときわ大きいのではないでしょうか。
その喜びを思い描きながら毎日のお手入れを楽しんでいきましょう!